不妊症とは
MEDICAL SERVICE
不妊症と不妊治療の流れ
妊娠と不妊症について
妊娠を希望している男女が、避妊をせずに定期的な性生活を送っているにもかかわらず、1年以上妊娠に至らない状態を、一般的に「不妊」と考えます。
また、この1年という期間を満たしていなくても、妊娠を妨げる原因が見つかり、医学的な治療が必要と判断される場合には「不妊症」と診断されます。
不妊症は決して珍しいものではなく、現在では多くのご夫婦が経験する身近な問題となっています。
不妊治療は「早めの理解と行動」が大切です
不妊症の原因は一人ひとり異なり、年齢や背景によって適切な対応も変わります。
「様子を見よう」と悩んでいる間に、選択肢が狭くなってしまうこともあります。
少しでも不安があれば、まずは現状を知ることから始めましょう。
不妊症は決して特別なことではありません
不妊症は決して珍しいものではなく、約4.4組に1組(22.7%)のご夫婦が不妊の検査や治療を経験していると報告されています。
また、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)によって生まれる赤ちゃんも、現在では約9人に1人にのぼり、不妊治療はすでに特別な医療ではなく、ごく身近な選択肢となっています。
(日本産科婦人科学会 2023年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績より)
自然妊娠の仕組み
妊娠は、以下のような複数の過程がすべて正常に進むことで成立します。
1.卵巣から排卵が起こる
2.卵管采が卵子をピックアップする
3.精子が腟から頸管、子宮、卵管へと進む
4.精子が卵子に入り受精する
5.受精卵が細胞分裂しながら子宮へ移動する
6.受精から約1週間程度で子宮内膜に着床する。

このどこか一つでもうまくいかないと、妊娠は成立しません。
不妊症とは、これらの過程のどこかに問題が生じている状態と考えることができます。
不妊症と診断する目安
不妊症と考えるまでの期間は、女性の年齢によって異なります。
• 女性が35歳未満の場合:不妊期間 1年
• 女性が35歳以上40歳未満の場合:不妊期間 6か月
これは、年齢とともに妊娠率が低下することが医学的に明らかになっているためです。特に35歳以降は妊娠率の低下が加速することが知られており、早めの検査・相談が勧められています。
以下に該当する方は、できるだけ早めの受診をおすすめします。
女性側
・40歳以上
・子宮筋腫、子宮内膜症を指摘されたことがある
・性感染症や骨盤腹膜炎の既往のある人
・月経不順・無月経などの月経異常がある
・卵巣手術の既往がある
・やせや肥満の人
・抗がん剤治療や放射線治療の既往がある
男性側
・生活習慣の乱れ(喫煙、過度の飲酒、肥満)
・成人後におたふくかぜ(ムンプス)にかかったことがある
・抗がん剤治療や放射線治療の既往がある
・加齢
・精巣の手術歴がある
・勃起障害(ED)がある
・精索静脈瘤などの疾患
これらに当てはまる場合は、「まだ期間が短いから」と様子を見るよりも、早めに専門医へ相談することで選択肢が広がります。
またWHO(世界保健機構)の報告や関連データでは、不妊症の原因は男性・女性いずれにもあり、決して女性だけの問題ではないことが示されています。

不妊原因の約半数(男性だけ 24%+男女とも 24% = 48%)は男性側にも原因があることになります。
不妊治療はどちらか一方だけが頑張るものではありません。二人で一緒にすすめていきましょう。
不妊症の主な原因について
女性の不妊症にはさまざまな原因があり、ひとつだけではなく複数の要因が重なっていることも少なくありません。
代表的なものとして、排卵、卵管、子宮、子宮頸管、免疫の問題などが知られています。
この中でも、排卵の異常や卵管の異常は頻度が高く、男性側の原因とあわせて「不妊症の主な原因」とされています。
① 排卵に関する原因(排卵因子)
通常、月経周期がおおむね一定(25~38日程度)で、基礎体温が低温期と高温期に分かれている場合、排卵が起こっている可能性が高いと考えられます。
一方で、月経不順や無月経がある場合には、排卵がうまく起こっていない可能性があります。
排卵障害の原因としては、
• ホルモンバランスの異常(プロラクチンの過剰分泌など)
• 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
• 強いストレス
• 急激な体重減少や過度なダイエット
などが挙げられます。
また、若い年齢であっても卵巣の働きが著しく低下し、排卵が起こらなくなる早発卵巣不全も、不妊の原因となることがあります。
② 卵管に関する原因(卵管因子)
卵管は、卵子と精子が出会い、受精が起こる大切な場所です。
この卵管が詰まっていたり、狭くなっていたり、周囲との癒着によって動きが悪くなると、卵子をうまく取り込めず、不妊の原因となります。
卵管のトラブルは、
• 性器クラミジア感染症
• 子宮内膜症
• 過去の腹部・骨盤内手術による癒着
などがきっかけとなることがあります。
③ 子宮に関する原因(子宮因子)
子宮は、受精卵が着床し、妊娠を継続するための場所です。
子宮の内腔を変形させるような子宮筋腫(特に粘膜下筋腫)や、一部の子宮内膜ポリープは、着床を妨げる原因となることがあります。
また、子宮の中に癒着が生じる「子宮腔内癒着症(アッシャーマン症候群)」では、月経量の減少や着床障害が起こり、不妊につながることがあります。
なお、生まれつきの子宮の形の違いである子宮奇形は、不妊の原因になることもありますが、流産の原因になることが多いと考えられています。
当院では子宮内膜ポリープについて日帰りで手術を行うことが可能です。また慢性子宮内膜炎についても着床障害の原因となることがあるため抗生剤やプロバイオティクスにて治療を行うことがあります。
④ 子宮頸管に関する原因(頸管因子)
排卵期には、精子が子宮内へ進みやすいように、透明で粘りのあるおりもの(頸管粘液)が増えます。
しかし、子宮頸部の手術や炎症などによって、この粘液が十分に分泌されない場合、精子が子宮内へ進みにくくなり、不妊の原因となることがあります。
⑤ 免疫に関する原因(免疫因子)
まれに、精子を異物と認識してしまう抗体(抗精子抗体)が体内で作られることがあります。
この抗体が存在すると、精子の動きが妨げられたり、卵子と結合できなくなったりするため、妊娠が成立しにくくなります。
この場合、タイミング法や人工授精では十分な効果が得られず、体外受精などの治療が必要となることもあります。
⑥ 原因不明不妊について
検査を行っても、はっきりとした原因が見つからない不妊を「原因不明不妊」と呼びます。
これは「原因がない」という意味ではなく、現在の検査では明らかにできない要因が存在している可能性を示しています。
原因不明不妊では、
• 精子と卵子が体内で出会えていない
• 出会っていても受精に至っていない
• 卵子や精子の質(発育する力)が低下している
といった可能性が考えられます。
特に加齢に伴い、原因不明不妊の割合は増える傾向があることが知られています。
精子や卵子の力が大きく低下してしまうと、現在の医学では回復が難しい場合もあるため、原因がはっきりしなくても早めに治療を開始することが重要です。
男性の不妊症の原因について
不妊症は女性だけの問題ではなく、男性側に原因が関与しているケースも少なくありません。
男性不妊の原因は大きく分けて、次の3つに分類されます。
1. 精子の数や運動性に問題がある
2. 勃起や射精がうまくいかない
3. 精子は作られているが、通り道に問題がある
それぞれについて、わかりやすくご説明します。
① 精子をつくる力に関する問題(造精機能の低下)
精子は精巣(睾丸)で作られ、その後、精巣上体を通過する過程で運動能力を獲得し、受精できる状態へと成熟します。
この精子を作る・育てる過程に異常がある場合、精子の数が少なくなったり、動きが悪くなったり、形に異常が多くなったりして、妊娠しにくくなります。
このタイプの男性不妊では、原因が特定できないケースも少なくありませんが、以下のような要因が関係している可能性があると考えられています。
• 生活習慣の乱れ(睡眠不足、喫煙、過度の飲酒など)
• 精巣の温度が高くなる環境
• 射精頻度が極端に少ない状態
治療としては、生活習慣の見直しに加え、必要に応じて漢方薬、ビタミン剤、抗酸化作用のある薬剤などを用いることがあります。
また、比較的頻度の高い原因として、精索静脈瘤(精巣の周囲の静脈が拡張する状態)があり、この場合は手術によって精液所見が改善する可能性があります。
そのほかにも、
• ホルモン分泌の異常による精子形成障害
• 停留精巣の既往
• 思春期以降のおたふくかぜによる精巣炎
• 染色体や遺伝子の異常
• 抗がん剤や放射線治療の影響
などが、精子をつくる力の低下につながることがあります。

② 勃起や射精に関する問題(性機能障害)
性行為自体がうまく行えない場合も、男性不妊の原因となります。
代表的なものとして、
• 勃起が十分に得られない「勃起障害(ED)」
• 射精ができない、またはうまくできない「射精障害」
があります。
EDの原因には、動脈硬化や糖尿病などによる血管・神経の障害のほか、心理的な要因も大きく関係します。
不妊治療において「排卵日に合わせなければならない」というプレッシャーが、かえって勃起や射精を妨げてしまうケースも少なくありません。
射精障害には、
• 精液が膀胱内に逆流する逆行性射精
• 精液がほとんど出ない無精液症
• 早漏や遅漏など、射精のタイミングに関する問題
などがあり、原因は神経の障害、糖尿病、薬剤の影響、心理的要因など多岐にわたります。
③ 精子の通り道に関する問題(精路通過障害)
精子は、精巣で作られた後、精巣上体・精管・射精管を通って尿道へと運ばれます。
この通り道のどこかが生まれつき欠損していたり、途中で塞がれている場合、精巣内では精子が作られていても、精液中に精子が出てこない状態になります。
この状態は「閉塞性無精子症」と呼ばれ、原因としては、
• 生まれつき精管が存在しない場合
• 過去の炎症による閉塞
• 鼠径ヘルニア手術などの影響
などが挙げられます。
このタイプの不妊では、精路の再建手術や、精巣や精巣上体から精子を直接回収して顕微授精を行う方法により、妊娠の可能性が得られることがあります。

出典:厚生労働省研究班は2015年度、国内の医療機関39施設の患者約7300人を対象に、男性不妊の要因を調査
男性不妊も、早めの検査と相談が大切です!
男性不妊は、自覚症状がないまま進行していることも多く、「検査をして初めて分かる」ケースが少なくありません。
また、女性と同様に、年齢や既往歴によって治療の選択肢が変わることもあります。
不妊治療は、カップルで一緒に取り組む医療です。
少しでも不安があれば、早めに専門医へご相談ください。
不妊治療の流れ
初診
問診、内診、超音波検査、必要に応じて、感染症検査等の検査を行います。
月経周期によってはホルモン検査の一部を行う場合もあります。
初診時は、今後のご希望等も含めゆっくりお話いただくため、十分なお時間をとって診察を行います。
検査
まずは、現状を把握することが大切です。月経周期の中で適切にバランス良くホルモンが分泌されているかを把握します。
ホルモン検査では検査日程(月経周期のいつ検査を行うか)が大切です。
ホルモン検査、超音波検査、感染症検査、子宮がん検査、卵巣の予備能を確認するAMH(抗ミュラー管ホルモン)、抗精子抗体検査、子宮卵管造影検査等です。必要な場合は子宮鏡検査も行います。
男性の場合は、精液検査を行います。
治療
検査結果に応じて、治療を開始します。
必要に応じて、人工授精や、高度生殖医療である体外受精や顕微授精といった治療も行いますが、必ずしも皆さんに高度生殖医療が必要になるわけではありません。
体に負担なく、それぞれの患者様に合った治療を、ご相談しながら進めていきます。
なるべく自然な妊娠を目指したい方、積極的に治療のステップアップをご希望の方、検査結果をもとに治療方針をご相談されたい方、ご夫婦のお考えはそれぞれです。
ご夫婦のご希望に寄り添い、治療方針を決定致します。
来院前に印刷してご記入いただけると効率的です
一定期間内の検査であれば重複しないよう配慮致します。
まずはお気軽にご相談ください
不妊治療の第一歩は、治療ではなく「相談」と「検査」です。
一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。
当院では、お一人おひとりの状況に合わせて、
医学的に適切で、心にも寄り添った不妊治療を大切にしています。